相続と対抗要件

本日は、平成30年の相続法改正に関する記事です。最近の相談、打ち合わせの際に、相続は「早いもの勝ち」になるのか、等の話題が出ることがあり、自分の理解を確認するためにも、改正法を確認してみました。
「早いもの勝ち」が問題となるのは、「法定相続分」を超えて遺産を取得した場合で、この場合の法定相続分を超えているか否かは、個々の遺産不動産を基準に考えるようです。預金を単独で相続する、土地を単独で相続する、遺言にしても、遺産分割にしても、このような形で相続を決着させる例は、一般的であると思います。
「早い者勝ち」というのは、法律上の「対抗要件」を先に備えることを意味します。「対抗要件」とは不動産であれば登記、預金については債務者(銀行)への通知または承諾ということですが、解約手続への着手というのが実際のことでしょうか。

「遺言」vs「共有持分の譲渡」

平成30年改正法前までは、遺言による相続分の指定により不動産を単独相続した場合、相続登記前に他の相続人の共有持分を差し押さえた者がいても、その差し押さえは無効となりました(最高裁判例平成5年7月19日)。
遺言による相続分の指定は、共有持分の差し押さえや譲渡と対抗関係にならないとされていました。
しかし、平成30年改正、民法899条の2第1項により、相続による権利の承継は法定相続分を超える部分については、対抗要件を備えなければ第三者に対抗できないと規定しました。
これにより、相続共有登記→共有持分の差し押さえ、譲渡による登記がなされた場合、たとえ遺言による所有権の単独取得の指定がされていても、共有持分差し押さえ・譲渡が有効となってしまいます。対抗関係というのは取得した第三者の善意・悪意、過失の有無は原則問いません(背信的悪意の例外)。

遺言執行者の定めがある場合

また改正法では、遺言執行者の職務執行を妨げる他の相続人の行為があっても、善意の第三者には対抗できないことも定められました(民法1013条第2項)。遺言執行者を定めた場合は、単純な対抗要件の前後ではありませんが、「善意の第三者」への持分譲渡が行われれば、遺言による取得は主張できなくなります

相続手続はお早めに

従来の判例を変更する法改正により、遺言によっても遺産分割によっても、遺産の取得、具体的相続分が確定したならば、速やかに相続登記手続や預金解約を進めるに越したことはありません。
遺言による相続分指定を受けながら、それを放置するのは問題かあるということです。
遺留分の争いがあるときなどは不動産の相続登記を進めるべきか悩むこともありましたが、改正法では遺留分減殺請求も金銭請求に限定されたので、やはり速やかに登記手続等を進めるべきです。