弁護士中林です。相続問題に離婚による身分関係変動は大きく影響します。

相続が年代の異なる世代間(縦の世代)の法律関係に関する問題であるとすれば、離婚は同じ世代間の法律問題に関する問題です。離婚によって身分関係(親族間の法律関係)が変化することもあれば、あるいは親族間の生活環境(事実上の関わり)が変化しても、身分関係は残ることもある、複雑な事態が発生します。

 1 離婚にともなう夫婦の関係

当然のことですが、離婚によって夫婦という身分関係(法律関係)は解消されます。結婚は「双方の合意(と届出)」により成立することから、法律上は契約の一種に例えることもあります。そうすると離婚は契約の解除に例えることができ、離婚により結婚という契約関係が終了することとなります。

離婚によって婚姻関係が「無くなる」側面が目立つわけですが。それだけでなく、婚姻の終了によってどのような法律効果が発生するかを考えます。

離婚の効果は様々にありますが、婚姻の終了だけでなく、財産分与請求権、子供の親権・監護権の発生、養育費支払義請求権(義務)、慰謝料請求権の発生などの効果がはっせいすることとなります。

相続の観点から離婚による影響を考えると、婚姻関係の終了により、配偶者間の(推定的)相続権も消滅することとなります。

2 離婚にともなう親子の関係

離婚によって親権・監護権はいずれか一方の親が行使することとなります。親権は権利というより責任の側面が強いので行使より「担当」とするのが適切かもしれません。

しかし、非親権者となったとしても、身分関係である親子関係は離婚によっても消滅しません。戦前の民法には親子の法律関係を解消する「勘当」の制度がありましたが、現代では血族親子関係を断ち切ることはごくわずかな例外(幼少期の特別養子縁組)を除き不可能です。

離婚後、非親権者となって、すなわち子供と別居して生計を共にしなくなってもなお親子の縁・連絡・交流を続けているという親子は非常に稀であると思います。

そのように疎遠な言わば「他人」の関係となっても、親子間の相続権は存続します。断ち切ることはできません。

離婚後、子供と生計を別にしたまま老齢となり、兄弟やおいめいが老後を看取った後、相続問題が発生したときに、この問題に直面することがままあります。年金・保険などの行政給付問題や病院・介護施設・賃貸物件の退去にはあまり影響がありませんが、所有不動産を処分したいときや、預貯金を解約したいときなどには、何十年と会っていない子の印鑑が必要、場合によっては孫の印鑑が必要ということが起こってきます。

この問題は立法的に解決が図られても良いかもしれません。疎遠となった子に対し一定の告知方法のもと(現代的にはウェブサイトでの告知が良いかもしれません)、一定期間に名乗り出ることがなければ相続権が消滅するような制度があってもいいかもしれません。

 3 財産処理に関する問題

離婚は法律的には身分関係の解消ですが、それに伴い生活環境を解消するという「法律外」の処理が大きな問題となります。離婚に伴う話し合いが進展すると家の権利をどうする、中の家財道具の処理をどうする、クレジットカードの引き落としをどうする、水道光熱費の支払いをどうする、生命保険の保険料や受取人をどうする、権利証、通帳、保険証券など重要書類の管理をどうするなど、本来別居等する前に処理するべき問題が積み残され、当人では解決できない(その前に把握していない)問題が多々あります。

相続に関係しそうな問題としては、土地の名義人が妻の親、建物の名義人は夫本人、夫が住宅ローン債務者となり、この土地建物に共同抵当権(土地建物双方を抵当に付す、住宅ローンの場合の通常処理)が付されている場合に離婚が発生し、妻の親が亡くなった場合、どのように処理を進めることになるでしょうか。さらに離婚の話が進まず、夫婦が別居したままであるとすればどういう問題となるでしょうか。

このような家の建て方をした背景には様々な事情があるのでしょうが、近い将来このような問題もいろいろと起こってくるかもしれません。