弁護士中林です。
7月6日の国会にて、配偶者居住権等を盛り込んだ民法改正法が成立しました。
どのような内容か調べてみました。

配偶者短期居住権

配偶者短期居住権は、被相続人の遺産であった建物を配偶者が相続することができなくとも、6か月間は一定の要件のもと、その配偶者が建物に居住し続けることができる権利です。
要件は、配偶者が、被相続人の遺産たる建物に相続開始の時において、無償で居住していたことです。
無償とは賃料などの支払い無く、「タダ」で居住しているということです。
有償すなわち賃料が発生する居住権ないし居住している状態は契約に基づいて発生していますが、無償の居住という状態は明確な契約の合意などが無く、被相続人死亡後に建物所有権の相続人から退去を求められれば応じる必要があるとされていました。
本改正により、遺産分割によって居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日までの間、被相続人の配偶者は、居住建物の所有権を相続によって取得した者に対して、居住建物について無償で使用する権利を主張することが可能となりました。
譲渡や第三者への転貸などは制限されますが、ひとまず居住権が保証されることとなります。

配偶者長期居住権

前述の短期居住権が、6か月の制限付きであったのに対し、長期居住権は配偶者の一生亡くなるまで、無償居住が認められる権利です。
ただし、要件は短期居住権と異なり、被相続人の生前からの居住により当然に認められるものではなく、①遺産分割により配偶者居住権を取得する、②遺言により配偶者居住権の遺贈を受ける、③被相続人と配偶者の間に死因贈与契約がなされる、以上①から③のいずれかの事情が必要です。
ざっと言うと、被相続人から承認される(②③のいずれか)か、相続人から承認される(①)か、加えて単に一筆書くというものでなく、遺産分割協議書、遺言、死因贈与契約書などの様式が必要となります。
一方、裁判所が遺産分割審判において配偶者長期居住権を認めうることも改正法には盛り込まれました。要件としては、「①配偶者が配偶者居住権を取得したい旨を申し出た場合に、②居住建物の所有者が受ける不利益を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき」となります。
ただし、②のような認定を家庭裁判所が積極的に行うのは極めてまれなケースかと思います。配偶者にほとんど資力がない、高齢で障害や疾病を抱えている、などの事情は昨今の高齢者には大抵あてはまるものですので、裁判所の運用を見守りたいところです。

遺産分割への影響

長期居住権の裁判所による認定が消極的に止まるのであれば、遺産分割に新しい流れが出るなどの影響はほとんど無いと思います。
短期居住権もせいぜい6か月の居住ですし、遺言や遺産分割で配偶者の保護を図ることは従前から行われていました。
相続人間で争いがある場合に、裁判所が長期居住権を積極的に認定するということはなかなかハードルが高いかもしれません。しかし、一生涯の長期居住権をちらつかせながら、例えば5年から10年の居住を認めるような和解をめざすという運用は多くなるかもしれません。