1 土地の放棄を認める制度

弁護士中林です。
今日はニュースの紹介からです。

【朝日新聞デジタル(2018年5月29日 AM5:00配信)】
政府は、土地の所有権を放棄したい時に放棄できる制度の検討を始めた。人口減で土地の活用や売却に困る所有者が増えていることが背景にある。
(中略)
政府が来月に取りまとめる「骨太の方針」に盛り込む。法務省や国土交通省が具体的な検討を進め、来年2月にも方向性を示す。

記事にもあるとおり土地の活用、処分に困る問題は、相続の際に顕在化します。
かつて土地を入手し、それなりに管理を続けてきた被相続人にとっては、単に経済的な理由だけではなく、幼児期、青春期、その他人生真っ盛りの時期に保有していた土地は 思い入れもあって保有し続けることが多いのですが、相続人にとってはなぜここの土地が遺産に含まれるのか、なぜ手放さなかったのか、疑問噴出となることは多く、たいてい、自分が管理するのは「煩わしい」という想いに至ります。
この点は、記事にある人口減というのは、政策的に説明しやすい背景であって、本音はより複雑なところにあります。
経済の効率化、技術の進歩、情報伝達の高速化が進んだことにより、非効率な土地管理は「極度に非経済的」となったのです。

2 土地の放棄は容易に認められない

記事にもあるとおり民法239条には「所有者のない不動産は、国庫に帰属する」と規定されていますが、前提となるのは、土地の「所有権のない」状態は容易には生まれないということです。
前述の相続の場面において、全ての相続順位をもつ相続人が相続放棄を行えば、土地の所有権の無い状態が生まれます。ただし、よく誤解される点でもありますが、特定の土地だけを相続放棄することは認められません。価値のある財産を一物件、一口座の預金だけでも相続する場合は、相続放棄は認められません。
また、国・地方公共団体に寄付できないかという相談も多く受けますが、管理に費用を要し、活用の困難な土地の寄付は国も地方公共団体も受けません。

3 望ましい方向性

人口減少による土地管理の困難は政策的に説明しやすいなどと先ほどは書きましたが、長期的に見れば、いずれ切実な問題となります。
消滅自治体などという言葉も聞かれるようになりましたが、その場合まさにその自治体の土地全て、地域一帯を国、地方公共団体、何らかの団体が管理する必要が出てきます。
話が飛躍するようですが、中国の春秋戦国時代や三国志の時代、国力は人口であり、未開発地にいかに移民、屯田を進めるかを各勢力が競っていたそうです。
人が住まなくなった、利用しなくなった土地を資本を投入して新たな収益を生む、そんな仕組みが求められています。歴史は繰り返すといったところでしょうか。
土地の管理も公権力だけがやることもありません。収益物件を保有しつつ、未開発地を保有・管理し、長期的視野によりインフラ整備地にする、産廃処理地とする。民間企業や社団法人が関わる分野かもしれません。