1 身元保証の意義
一般に、介護施設に入所したり、病院に入院、転院する際に、身元保証人の署名を求められることが通常です。
身元保証人になる立場の方は、配偶者や近くで生活する子供が通常多いと思いますが、遠方に住む子供、兄弟姉妹が身元保証人となるケースも多いと思います。
配偶者、子供、兄弟姉妹などの身寄りのない方が、入所、入院する際の身元保証人として、親しい知人がなることもあるかとは思いますが、最近増えてきているのが、一定の料金のもと身元保証を引き受ける法人(NPO法人、一般社団法人)です。
生活保護受給者に関しては、公的に費用支払いが担保されていることから、身元保証を必要としない介護施設もあるようですが、病院入院の際には身元保証の存在を求められるケースが多いようです。
身元保証は法律上の用語ではなく、当該入所者・入院者の身辺の世話に携わる者という程度の意味内容です。もっとも介護施設に入所したり、病院に入院する方の「身辺の世話」の範囲、必要とされる事項は多岐にわたり、身元保証の負担は軽くはありません。
また、入院や治療の同意の場面では、本人の意思確認が不可能または不確実な場合には、医療行為への同意を求められることもあります。医療行為への同意についてはこのあと詳述します。
最近では、日常を共にしてきた親族でなければ、たとえ連絡を取ることが可能であっても、身元保証を法人に委託するケースも増えています。親族関係が希薄になったということかもしれませんが、ただそれだけでは無く、身元保証の負担の重さがその背景にあることは間違いありません。
なお、身元保証は、住宅の賃貸借契約や金銭消費貸借契約における「連帯保証」とは法律上の意味が異なります。身元保証を行うからといって、連帯保証人になるわけではありません。入所契約、入院契約の内容が肝心ですが、連帯保証を求めるのであれば、「連帯」の文言を署名欄にも明示しなければ、契約の有効性に疑問が生じます。

2 医療行為への同意
医療行為に同意が求められる法律上の意味について、述べたいと思います。
医療行為は、身体への侵襲を伴うのですが、当然ながら患者の生命身体の保護に必要な行為ですので、刑法上の暴行・傷害罪が適用されない結論には異議はありません。
ただし、刑法が適用されないための要件として、第一には本人の同意すなわち本人の自己決定に基づいて手術やその他の身体侵襲を伴う治療行為が行われなければいけません。
もっとも、治療の現場では、本人の意思確認が不可能または不確実な場合はままあり、その場合には、親族が身元保証人として医療行為に同意することが広く行われています。
身寄りのない方の場合、同意がなければ医療行為が受けられないのかというと、医師の治療義務に基づき、治療を行わないことも認められないため、医師または病院の責任において、治療行為を行うこととなります。治療の結果治れば(障害が収まれば)、すなわち患者の生命身体の保護に効果がある行為ならば、患者本人の「推定的承諾」に基づき、刑法の適用は無いということになります。
しかしながら、多くの医療機関の現場では「推定的承諾」に基づいて治療を行うことには否定的なようです。医師または病院の責任が問われる可能性が払拭できないことが理由です。
そのため、身寄りのない方の場合、法人が身元保証を引き受け、手術承諾書または治療承諾書に署名することが広く行われているようです。
このような身元保証法人の承諾によって、治療行為における医師の責任が回避されるか、治療方針の十分な説明が前提となることは明らかですが、緊急事態の元で行った承諾にどこまで効果があるか、ケースバイケースであることは否めません。
一方、身元保証を行った法人の責任は、身元保証時の本人の意思確認と治療方針の十分な確認があれば、問題が無いと思います。正に手術の直前に同意をすることは避けた方が良いと思います。