従来の自筆証書遺言の問題点

自筆証書遺言は作らない方がいいと、これまでの相談会でも繰り返しそのようにアドバイスをしてきましたが、民法改正により自筆証書遺言が格段に利用しやすくなるかもしれません。

自筆証書遺言の問題点は、第一に、全文を自筆で、手書きで作成しなければならないため、多数の文言からなる遺言を誤字、脱字無く作成することが事実上不可能であること。第二に、遺言書原本を自力で保管する必要があり、遺言が紛失や破損する危険が非常に大きいこと、であると言えます。

遺言者本人が、自力で作成できるため、遺言書作成の密航性が強く、偽造の可能性が高いことや、遺産分割の法的効力を発生させることが困難な「任せる、渡す、預ける」という文言で記載されてしまうことも問題点であるといえます。

上記の問題点を解消するべく、遺言の相談を受けた際には、公正証書遺言を断然進めていました。公正証書遺言の第一のメリットとして、遺言書本文を公証役場で作成するため複雑な内容が可能で、誤字、脱字の危険性が少ないこと、第二のメリットとして、遺言書原本のみならずデータベース化して遺言を保管するため保管の安全性と遺言書の検索の便宜が図られていることです。

公証役場での作成となるため、偽造の可能性が低く、法的効力に関しても万全を期すことができます。

ただし、公正証書遺言のデメリットとして、公証役場における遺言作成手数料が数万円程度必要という点があります。

 

改正法の自筆証書遺言

このたび予定されている改正法によれば、自筆証書遺言の本文を手書きする点は変わりませんが、パソコン等で入力し紙にプリントアウトした「財産目録」の添付が許容されるようです。

手書きの本文部分は「財産目録1~2の土地」というように、適宜引用するだけでよくなりますので、複数の財産の分割方法を自筆証書遺言で指定することに現実味が出てきます。誤字、誤植のリスクも低くなります。

財産目録の作成や、どの遺産をだれに分割指定するかについては、専門家への相談が望ましいと思いますが、遺言本文を公証役場で作成しなくても、間違いが少なく、内容も充実した遺言が作れる可能性が大きくなりました。

ただし、ある(推定)相続人が先に亡くなった場合には別の(推定)相続人に相続させるという、予備的相続文言については、全て手書きとする必要が出て来るため、自筆証書遺言によって対応できるかどうか、遺言者の「書く力」はやはり重要になってきます。

また、改正法においては、遺言により遺産分割を指定する自筆証書遺言は遺言者の住所地(または本籍地)を管轄する法務局に保管を委託することができるとなっています。

そして、公正証書における謄本交付に似た仕組みとして、自筆証書遺言をデータベース化し検索できるようにすることとや、自筆証書遺言の画像データをプリントアウトした用紙の交付が可能とするようです。

自筆証書遺言のデメリットであった保管の問題や検索の問題についても、改正法においては対応がなされるようです。

 

専門家の関与

自筆証書遺言の作成、保管が簡易にできるようになったとしても、遺言作成の前提として、遺産・財産を親族間でどのように分配するか、遺産特に不動産の評価額がどの程度になるか、専門家への相談のうえで、より良い配分を検討いただきたいと思います。