相続ワンストップ相談所、相談員の税理士青山徹です。

8月のブログでも書きましたがその時には書ききれなかった相続税の計算において基準となる財産評価基本通達の平成29年改正についての「疑問点等」について書きたいと思います

平成29年度税制改正大鋼において、

① 取引相場のない株式の評価

② 杉及びひのき、松の評価基準

③ 広大地の評価

④ 株式保有特定会社の判定基準

の見直しをおこなう旨が明記されましたことは8月のブログでも書きました。

①と②の改正については平成29年1月1日以降の相続・贈与から既に適用になっています。

③と④の改正については平成30年1月1日以降の相続・贈与から適用になります。

まず①の取引相場のない株式の評価について、大きく分けて類似業種比準方式についての見直しと、評価会社の規模区分の金額等の基準範囲の拡大がありました。

既に改正後の通達が適用されているので実際に評価実務やシミュレーションなどで明らかになってきたことは、アベノミクス効果で利益が生じているような法人については株の評価額が下がる傾向にありますが、利益が出せてないような法人、つまりはアベノミクスの恩恵を受けてない法人については株の評価額が上がる傾向にあるということがわかってきました。

世の多くの中小企業、小規模事業者において事業承継がすすんでおらず、この問題を放置しておくと2025年頃までの10年間累計で約22兆円のGDP(国内総生産)が失われる可能性があると経済産業省が試算したとつい先日発表がありました。

今回のような利益が生じている一部の法人についてのみが恩恵を受けるような相場のない株式の評価の改正では、ますます事業承継対策が先送りになってしまう気がしてなりません。

取引相場の株式については納税猶予制度の改正により、年々適用しやすくなっていることはまちがいないですが全国の適用件数が少ないという統計数値から実務的にまだまだ適用しにくいという現実があることがわかります。

利益が出せている法人も、利益が出せていない法人も平等に改正の影響を受けられるように改正をすすめていただきたいものです。

また、平成29年の改正大綱は平成28年の12月に公表されたのに、改正の適用が平成29年1月1日以降の相続・贈与から適用するということも疑問が残ります。

 

次に③の広大地の評価の改正ですが、「広大地」という言葉自体が完全になくなり、「地積規模の大きな宅地」の評価となりました。

8月にブログを担当した際にはまだ公表されてなかった情報(「財産評価通達の一部改正について」通達等のあらましについて)が先月10月3日付で国税庁から公表されたことで改正内容が確定したことになります。

この「広大地」の評価が改正されたのは、評価対象地が「広大地」に該当するかどうかの判定において抽象的は表現が多いため、その判断に迷い、結果的に不服審判所で争われるまでに至ったケースが非常に多かったからだと想定されます。

今回の改正で「地積規模の大きな宅地」として、「広大地」の評価では非常に悩みが多かった評価対象地の確定は悩むことなく簡単にできるようになりました。

しかし、その適用対象地が路線地域においては、「普通住宅地区」か「普通商業・併用住宅地区」に限定されてしまいました(倍率地域でも適用は可能です)。

改正前の「広大地」の評価においては、「中小工業地区」に存在する土地についても評価対象とすることができましたが、改正後の「地積規模の大きな宅地」の評価では「中小工業地区」に存在する土地についてはいくら「普通住宅地区」「普通商業・併用住宅地区」に存在する同じような地積、形状の土地だったとしても適用可能性がほぼなくなってしまいました。

そのような場合には、鑑定意見書等を添付してその妥当性を主張すれば認められるケースも出てくるかもしれないですが、おそらく不服審判所や税務訴訟まですすむケースになることが予想されます。

名古屋市内でも熱田区、中川区、港区の路線価図を確認してみると「中小工業地区」となっているところはまだまだたくさんあります。高度成長期には工場しかなかった地域も徐々に住宅地域に変わりつつあるとは思いますがまだまだ「中小工場地区」となっている地域は多く存在します。

こちらの改正は平成30年1月1日以降の相続・贈与から適用ですので、上記①②の改正より適用時期が遅くなっています。まだ年明けまで約2ヶ月ありますが、鑑定意見書などを添付しようとすると既に計画をスタートしないと年内贈与は難しいスケジュールです。しかし、熱田区、中川区、港区の路線価地域に土地を所有されている方が「広大地」の評価の適用を受けるためには年内に贈与するかしかない(もちろん年内に相続が開始すれば適用は可能です)のでこの機会を逃さないようにしてください。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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