遺留分と株式の問題

このブログでも何度も触れている遺留分ですが、後継者に事業を承継させる際に問題となります。株式を後継者となる相続人に集中させようとしても、他の相続人の遺留分が満たされていない場合、遺留分に見合う対価を支払うか、株式を分配することが必要になります。
遺留分に見合う財産を生前に分配することも考えらえますが、相続時の遺産の評価額これには株式も含まれますが、不確定であることが、事前の対処を取りにくくさせています。

遺留分に見合う財産の算定が難しいのであれば、遺留分そのものを相続前に無くす方法、手続きが気になりますが、民法1043条に推定相続人(相続人となるであろう者)による遺留分の放棄の手続きが定められています。
家庭裁判所の許可を条件に遺留分の放棄を認めるものです。運用上、放棄の対価となる財産の提供が必要とされていますが、遺留分金額を満たしているか否かという観点より、放棄をする推定相続人が納得しているか否かを重視する傾向にあります。
ただし、放棄の許可の申立は推定相続人から行わなければならないですし、推定相続人ごとに個別に手続きを行う必要があります。場合によっては家庭裁判所の許可の判断、特に必要となる対価の判断が異なることがありうるため、利用しにくさが否めません。

経営承継円滑化法の特例

平成28年4月から施行された経営承継円滑化法は遺留分に関する民法の規定の特例を定めています(以下「民法特例」といいます)。
民法特例の規定は、①自社株式について遺留分算定基礎財産から除外する(除外合意)、②遺留分算定基礎財産に算入する自社株式の価額を合意時の時価に固定(固定合意)するものです。
①除外合意がなされると、遺留分の算定は贈与された自社株式以外の遺産等をもとに算定することになります。②固定合意がなされると相続時ではなく合意時の株価をもとに遺留分を算定することとなります。①は家督相続に近い形、②は分割相続だけれど話し合った時期の価格で財産分けを確定するというものです。いずれの方法も、自社株の相続時の価額が想定できないリスクを回避できます。

民法特例を利用できる対象者の要件として、①合意時点で3年以上事業継続する非上場会社であること、②過去又は現在会社の代表者から、③合意時点の代表者が株式の贈与等を受け議決権の過半数を保有すること、が求められています。
そして、民法特例に定められている手続要件として、(1)推定相続人全員および後継者の合意に基づく合意書の作成、(2)経済産業大臣の確認、(3)家庭裁判所の許可、が求められています。
これらの手続きの中で、私たち専門家が文書作成などに関わります。固定合意においては合意書の一番のキモである自社株式の価額(固定する価格)については、税理士、公認会計士、弁護士等の証明が必要とされています。

非常に要件が多く、手続きの手間の多い特例ですが、自社株式を遺留分の算定から除外、あるいは固定できるメリットは非常に大きいことです。今後運用のメリット、デメリットも出て来ると思いますが、遺留分を巡る紛争から解放できる制度として魅力的です。