相続ワンストップ相談所、相談員の税理士青山徹です。

 

今回は弁護士のブログとかぶるかもしれませんが、相続関係の民法改正について書きたいと思います。

 

民法の相続に関する法律は、昭和55年に配偶者の法定相続分に引上げや寄与分制度の創設等の見直しが行われた後は30年間は何の改正も行われてきませんでしたが、やっと改正に向けて動きはじめました。

最終的には、今年、平成29の年末か来年の初めに改正要綱案の取りまとめを目指す方向で動いているようです。

よって、まだ未確定な部分なかりですが、情報として確認できている部分をお伝えしたいと思います。

 

改正へ向けての動きは、平成27年2月に法務大臣から見直しについての諮問があり、その調査審議の為の民法関係部会が設置されたことからスタートしました。

 

その民法部会において平成27年4月から審議をかさね、平成28年6月に「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」が取りまとめられ、2ヶ月間程度パブリックコメントにかけられました。そして平成28年10月以降、パブリックコメントに寄せられた意見を踏まえて新たな方策も含めてさらなる審議が続けられていましたが、中間試案以降に提案されたあらたな方策については、「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」として再度パブリックコメントにかけられました。

 

まずは、「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」をさわりだけ確認したいと思います。

≪配偶者の居住権を保護するための方策≫

①短期居住権と②長期居住権の新設の提案。①の短期居住権は相続開始時に被相続人の所有する建物に居住していた場合は分割協議によって建物の所有者が確定するまでの間、無償でしようすることができるというもの。②の長期居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の建物を対象に、終身または一定期間配偶者にその建物の使用を認めるというもの。パブリックコメントは①は賛成意見が多かったが②については賛成意見と反対意見が分かれました。居住権確保の観点からは賛成だが、財産評価の困難性等を理由に反対とうことのようです。

 

≪遺産分割に関する見直し≫

配偶者の相続分の見直し案として①被相続人の財産が婚姻以後に一定割合以上増加した場合に、その割合に応じて配偶者の具体的相続分を増やす。②婚姻成立後一定期間が経過した場合に、各配偶者の意思表示によって配偶者の法定相続分を引き上げることを認める考え方。③同じく婚姻成立後一定期間が経過により当然に配偶者の法定相続分が引き上げられる考え方。でいずれも配偶者の相続分を引き上げる考え方でしたが、配偶者の相続分を引き上げること自体にそもそも反対だという意見が多数のようです。

提案するのは有識者の方々だと思いますが、その方々の意見と現場の意見がまったく違っていたということです。

 

≪遺言制度に関する見直し≫

①遺贈等の対象となる財産の特定に関する事項については自筆でなくてもいいとする自筆証書遺言の方式の緩和。②遺言書を作成した者が一定の公的機関に遺言の原本を委ねることができる自筆証書遺言の保管制度の創設。が試案にありましたが、①は賛成が多数、②の創設に関しては慎重な意見も多かったようです。

①に関しては固定資産税の課税明細や評価証明書を添付すれば事足りるのにとは思いますし、実際に不動産を多く所有されている方が全部の不動産の所在、地番、地目を記載するのが面倒ということで自筆証書遺言は無理ですと言われた経験があるので是非改正されて欲しいです。②については、きっと公証役場がその保管場所になるような気がしますがいろいろな理由でなくなりそうな気がします。

 

≪遺留分制度に関する見直し≫

遺留分減殺請求によって原則として金銭債権が発生するものとしつつ、受遺者又は受贈者において、遺贈又は贈与の目的財産による返還を求めることができる制度を設けるという提言がされました。さらに、①金銭にかえて、現物での返還を求めた場合、裁判所が返還すべき財産の内容を定めるとする案。②現行法と同様の規律で物件的効果が生ずるという案。が提案されました。遺留分の減殺請求権の行使にともなって生ずる権利を原則金銭債権とする点には賛成多数のようですが、①と②では、①の案が賛成多数のようです。

 

≪相続人以外の者の貢献を考慮するための方策≫

①請求者の範囲を限定する。②貢献の対象とする行為を無償の役務提供に限定する。案がありました。そもそも、相続人でない人の介護等を考慮して金銭請求を認めることは、当事者の公平に資する判断から賛成意見があったものの、相続に関する紛争が複雑化長期化することを懸念して反対する意見もあったようです。

その方策の改正は貢献の度合いの判断基準が明確にできないことから現実的にはなかなか難しい気がします。

 

 

以上が中間試案のさわりですが、この中間試案のパブリックコメントを受けて調査審議された後にまとめられた「追加試案」についてもさわりだけご説明します。

 

「追加試案」では

①遺産分割等に関する見直し等 ②遺留分制度に関する見直し に向けての考え方が追加されています。

①については A 配偶者保護のための方策(持ち戻し免除の意思表示の推定規定)。

B 仮払制度の創設、要件明確化。 C 一部分割。 D 相続開始後の共同相続人による財産処分。という内容のもので、より細かい論点になっています。

このなかでも一番説明がわかりやすいAについてのみ説明します。中間試案で配偶者の相続分を上げることに反対意見が多かったのは事実ですが、配偶者保護の方策は必要であるとの認識から「持ち戻し免除の意思表示の推定規定」です、つまり、贈与税の配偶者特例を受けて相続開始前に配偶者が居住用財産の贈与を受けた部分については、「相続財産の前もらい」と考えないということです。結果、相続が「争続」になったとしても、配偶者が相続前に贈与を受けた部分については、相続財産とは切り離して計算できるといるになります。

民法が税法に寄り添うかたちになってますが、細かい条件も税法と同じにしてもらえると実務での対応がしやすくなり助かります。

Bについては、遺産分割の審判又は調停の申し立てがあった場合に、遺産には原則さわれなくなってしまいます、しかし、そこからしか生活費がまかなえない場合や、債務の弁済のために家庭裁判所が遺産のうち預貯金債権については仮払ができるようにするものです。

これは、確実に創設してもらいたい規程です。

Cは、家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払い戻しを認める方策。遺産のうち一定額までは単独で権利行使可能にするというもの。

Dは、遺産分割終了前に相続人に一人が遺産の全部または一部を処分した場合の規律です。

 

②については、減殺請求権の行使に伴う権利は原則金銭債権とする方向性に賛成意見が多数あったことから、より踏み込んだ内容がしめされています。

例えば、A 遺贈と贈与があるときは、受贈者が先に負担する。B 複数の遺贈がある時、または同時期の贈与がある時は、その目的の価額の割合に応じて負担する。C 複数の贈与がある場合には、後の贈与を受けた者から順次前の贈与を受けた者が負担する。

また、金銭債権での支払に代えて、現物給付することができる旨の規律を設けることも示されています。

 

以上が「中間試案」と「追加試案」の簡単な説明になります。

すべてをお伝えできたわけではないですが、どのような内容のことが話あわれているのかわかって頂けましたでしょうか。

今回の民法改正については平成29年7月19日の日経新聞にも「遺産分割から居住除く

」という見出しが一面に記事が載りましたので世の中の関心もとても高いことが予想されます。

 

民法の相続法制の改正は相続税の改正にも必ず影響してきますので、税理士としても引き続きこの民法改正にはとても注目しています。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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