おはようございます。弁護士中林です。

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本題の1月31日最高裁判決

先月末にあった最高裁判所の判決の中で、「節税目的の養子縁組も直ちに無効では無い」とする判断が話題となりました。

法律上、養子縁組の効力として、「養親子関係をむすぶ意思」平たく言うと、「親子になる意思」が必要とされています。

本件は、家庭裁判所の審判では養子縁組は有効、つまり被相続人には養子との間に親子になる意思があるとされましたが、上級審の高等裁判所では「節税目的」があったとして養子縁組は無効という判断がされました。

最高裁判所の判断は、高等裁判所の判断を覆したものとなります。報道で言われているように、実務で広く行われている、養子縁組を行うことによる節税対策の有効性を裏付ける判断といえると思います。

 

節税目的があったという認定

裁判実務の観点からは、高等裁判所の節税目的があったという認定がどのように行われたのか、興味深いものがあります。

節税目的が主要な目的あるいは「節税目的しか無い」という認定だったのか、節税目的と親子になる目的が同等くらいであるという認定だったのか。

この点は縁組時に税理士から節税対策の説明を受けていたので、節税目的があった、だから養子縁組は無効、という報道では判然としません。

目的という人の主観的な考えを立証するのは、その人がそのときどのように行動していたかという客観的な事情から推測するという方法を採るのが裁判の場でも通常です。先ほどの税理士に節税の相談をしていたという事情から節税目的を認定するのも同じ手法だと思います。

このような認定の枠組みの場合、反論する側もその人の反対の目的を推測させる行動を主張することも裁判の常です。

そういう主張がぶつかり合う場ですから、せいぜい節税目的と親子になる目的が「併存」という認定しかできないと思いますが、そうすると、高等裁判所は、節税目的が少しでもあれば養子縁組は無効という極端な判断をしたのではないかと思われます。

裁判所も国家側の組織ですから、養子縁組を利用するような節税対策は容認できないという価値感が強かったのでしょうか。

 

最高裁の判断の妥当性

高等裁判所の認定が確定した場合、実務的な影響としては相続税申告が必要となる場合には、あらゆる養子縁組が無効となりかねない、やはり非常識といえる状況が発生する懸念があったと思います。

そもそも、養子縁組によって子供の数が増えるのですから、およそ全ての養子縁組の効果として節税効果が発生するわけです。

養子縁組を行う際に節税目的無しに養子縁組する方が難しい、あるいは節税効果が必ず発生する以上、節税目的が推認されない養子縁組など存在しないわけです。

高裁判断を前提とすれば、養子縁組が無効となることにより相続分の増える相続人は必ず養子縁組無効を主張するでしょう。

高裁判断は、相続の際の紛争の土壌を大きく拡げてしまっていることになります。

一方で、相続税法上は、養子縁組による節税対策が無限に拡大しないように、節税効果が発生する養子の人数に制限をかけています。実子が存在する場合は相続税法上節税効果(基礎控除)が発生する養子は一人まで、実子が存在しない場合は節税効果が発生する養子は二人まで、となっています。

余談ですが、数年前に、タイで体外受精により数十人の「子供?」を作っていたということが話題になりましたが、民法上、体外受精は血縁上の実子とはなりませんし、養子縁組の節税効果も上記のように制限されているので、このような方法で節税効果を拡大することはできません。

上記の相続税法の養子の制限の存在は、制限内である場合は節税効果ある養子縁組を承認しているわけです。このことからも節税目的があっても直ちに無効とならないという判断は常識的で、妥当であると言えます。

 

節税目的のみの養子縁組は無効となる余地あり

今回の最高裁判断も養子縁組の要件に「親子となる意思」が必要という枠組みは維持しています。親子となる意思そのものに疑問がある場合はやはり無効となりかねません。

相続人が知人を養子とする、あるいは愛人をむりやり養子とさせるというようなケースは、節税目的の有無を論ずるまでも無く無効となるでしょう。